Midnight Note

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それでも僕が『異世界スマホ』を好きな理由と、『Steins;Gate』の狂気のこと

こんにちは、Mistirです。

以前書いた『異世界スマホ』の分析が、結構たくさんの方にお読み頂けています。
ありがたい限りです。

 

mistclast.hatenablog.com

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僕は異世界スマホについて結構批判的な論調で書いているけど、その一方で「嫌いじゃない」とも書いてる。

その理由は以前「『異世界スマホ』は裏切らない」からだと言った。
無茶苦茶な展開で、全てをひっくり返したりしない。

だけど、少し踏み込んで考えてみた。
そうすると僕が物語に望んでいるものが見えてきた。
否、もともと自覚はあったのだが、良い機会なので詳しく語ってみようと思う。

それでも僕が『異世界スマホ』を好きな理由と、『Steins;Gate』の狂気のこと。
一方は苦行とさえ称されるアニメ。もう一方は、かなり有名な名作ゲームを原作とした名作アニメ。
対極に見えるこの2つには、「ある」共通点があった。

『STEINS;GATE』の内容を知らない方は、一応ネタバレ対策しているので、途中まで安心して読んで下さいね。

 

 


作品と「テーマ」あるいは「骨格」

結論から言ってしまえば、僕は「テーマ」が太い物語が好きだ。
逆に言えば、「テーマ」を気軽に弄ぶ作品が嫌いだ。

名前を出してしまうけど、
『くまみこ』
というアニメが炎上した過去がある。

kmmk.tv


主人公の可愛い女の子と、喋るクマのハートフルストーリー……
……だったはずが、最終話で主人公の女の子が洗脳されて(控えめに言っても)悲劇的にしか見えないようなエンディングを迎えてしまった。
視聴者からは非難轟々だ。
ちなみに僕は、最終話に至る前に随所に主人公の女の子が可哀想で見てられないシーンがあって、……つまり、「キツくて笑えないシーン」が多くて、視聴を切ってしまったという過去がある。

何故こんなことが起こってしまったかというと……
要するに、視聴者には第3話までの時点で「可愛い女の子とクマのゆる系ハートフルストーリー」っていう「骨格」がインストールされていたのだ。
にも関わらず、インストールされたその骨格ををむやみに「弄んだ」。
その結果が「炎上」だったのだ、というのが僕の出した結論だ。
ちなみに「インストールされた骨格やテーマを弄ぶ」ことと「インストールされた骨格やテーマを覆す」ことは全くの別物。後述します。

で、僕が少なからず「好き」って言ってるアニメは、一つも「テーマ」あるいは「骨格」を弄ばない。むしろ「徹底している」。
僕は「クソアニメマイスター」を勝手に自称しているけれど、そこには無駄なプライドを持っている。

僕が散々好きだ好きだ愛していると言ってやまない『聖剣使いの禁呪詠唱』は、第一話で「あ、これはしょうもないテンションで突っ切るアニメだ」と、一部の視聴者に強制的なインストールを走らせていた。

 

それは最終話まで途切れることなく、否、むしろ強化されながら続いた。
最後まで、しょうもなくて、ハイテンションで、笑えて、そして頭が悪く、……その上で地味に主人公に好感が持てる。
本当に「ええアニメ」だったんです。

その点では、『異世界スマホ』も半端じゃない。
最初から最後まで、……良くも悪くも、僕らが思い浮かべる「なろう系ってこういうのでしょ?」を徹底的にトレースしている。
それって何気なく凄いことで、「そんな作品」を求めてる視聴者に対する誠実さって意味では、本当に相当なレベルなのだと思っている。

どんな形であれ、僕は誠実な作品を愛する。
ふざけるなら、ふざけることに誠実であってほしい。
言い換えれば……

「テーマを弄ばないでくれ」。

タイムリーな話題だけど、『けものフレンズ』のたつき監督がKADOKAWAに降板させられた件がアニメ史に残る大炎上状態だ。
『けものフレンズ』のテーマ、あるいは骨格は「優しい世界」だった。
「大人が大人の世知辛さを忘れさせる世界」だった。
そのテーマと不協和音を奏で、大爆発を起こしているのが現状だ。
……この点をTwitter上で指摘された方もいらっしゃったが、見失ってしまった……けものフレンズに対する話題があまりにも多すぎる……
ちなみに『けものフレンズ』については過去記事で扱っているから、ぜひお読み頂きたい。
実は相当序盤(第4話あたり?)の時点で書いたものだったりする。

mistclast.hatenablog.com

 

さて、話を戻すと……
僕らにインストールされた作品の「テーマ」は、相当に僕らに大きな影響を与えている。
特に僕のような分析フェチには尚更だ。
作品そのものの面白さ(と言うものがあるとすれば)というよりも、
「テーマに対する真摯さ」
あるいは「どこまでしっかりと『吹っ切れて』いるか」
あるいは「どれだけしっかりと『僕らを欺いてくれて』いるか」。
そんなことに注目してしまう。

……そう。もうお分かりだろう。
例えば、「テーマを思いっきり裏切る作品」や、「テーマを途中で変更する作品」は駄目なのか、と言われたら全然そんなことはないということだ。

その点も踏まえた上で、僕の中で「テーマに対する向き合い方」「真摯さ」が、臨界点を超えて狂気の域に達している作品がある。

そう。それがまさしくーー

steinsgate.tv



『Steins;Gate』という作品だ。

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壁紙ダウンロード - 想定科学ADV『STEINS;GATE(シュタインズゲート)』


アニメ、原作ゲームともに大人気で、「記憶を消してもう一度プレイしたい」とさえ言われる緻密なシナリオが話題の大作だ。


ここからは重大なネタバレになるので、申し訳ないですが同作品を最終話まで見るorエンディングまで見ていない方は画面を閉じて頂きたい。



ずっと語りたかった。
この作品の、狂気的なまでのテーマとの向き合い方について。





「テーマ」を騙せ

まず、考えてみて欲しい。
『Steins;Gate(以下シュタゲ)』のメインテーマ、あるいは作品を一言で表すとすると、一体何なのだろう?

作品によっては「伝えたいこと」や「テーマ」なんてない場合もあるし、僕はそれを否定しない。
「テーマなんてねーよ!」こそが「テーマ」になっていたりする。僕はそんな作品もそんな作品で愛しているが、それは別の話。

この作品には確実に、強烈なテーマ、あるいは骨格が存在している。

1分ほど考えてみて欲しい。






……。







では答え合わせだ。
僕は、コレ以外にシュタゲを語る言葉は無いと思っている。


アニメ版の『シュタゲ』クライマックス。
最大の謎が「未来のオカリン(執念のオカリン)」から明かされるシーンで、オカリンに告げられる一言。
そして、ネタバレと言われたアニメ版OP『Hacking to the Gate』の二番の、あのフレーズ。







「なかったことにしてはいけない」








僕は断言する。
『シュタゲ』を貫く骨格は、まさにこの一言だ。




「確かに印象的だけれど、そこまでか?」と思われた方もいるかもしれない。
だが、この「テーマ」に至るまでのプロセスはあまりにも徹底している。

思い出して欲しい。
『シュタゲ』はーー


この時点に至るまで。
僅かなスキもなく。完璧に。







「なかったことにする」物語なのだ。






説明するまでもないだろう。
「全て」だ。「全て」が「なかったことにする」というたったひとつの要素に注ぎ込まれている。
それこそが、作品の表側に見える「最大の目的」で、そしてーー
究極のフェイクだ。

オカリンの性格も完全に合致している。

「厨二病」。
それは決して、ただのキャラクターの魅力を増強する「付加要素」じゃない。
オカリンは、必ず厨二病でなくてはならなかった。

実際に作中でも厨二病の過去を自嘲するシーンがある。
「なかったことにできない」ことを嘆き、全てをバカバカしく思うシーンが有る。

だが。
もうお気付きだろう。

「なかったことにする」ことでは、何も解決しない。
厳密に言えばまゆりは救えるが、紅莉栖は救えない。


その全てを「なかったことにしなかった」ことが、「Steins;Gate」に辿り着く唯一の手段だった。

何度考えても、あまりにも壮大過ぎる。
「なかったことにしてはいけない」。
この一言のためだけに、ゲームデザインを全て「なかったことにする」に吹っ切っている。
これを狂気の領域と言わずしてなんだと言うのだ。

言い換えれば、結構優しい物語でもある。
多くの、僕を含むオタクにとって「なかったことにしたい」過去、厨二病。
それさえも最大のテーマ、「なかったことにしてはいけない」に繋げているのだから。

そう。何一つ欠けてはならなかったのだ。
何一つ、「なかったことにしては」いけなかったのだ。

作品のテーマに対する真摯さって意味なら、僕は『シュタゲ』を超える作品を知らない。

まとめ

まとめられねえよ!!!!(丸投げ)
語りたいように語っただけなので、特にまとめはないです。

まぁこれはあくまでも僕なりの作品の楽しみ方だし、とりわけ文学作品だと「この作品のテーマは……」なんて言うと失笑モノだ。一言で語れないから数万字の作品にしているのだ。なんでもかんでも一言でまとめようとするやつはぶっ飛ばしてやれ。
ここまで「テーマに対する執念」みたいなことを語ってきた僕だが、ある種の文学作品に対して「要するにこういうことでしょ~?」みたいなことを言われると拳で抵抗したくなることもある。

だが一方で、あまりにも真摯にワンテーマに向かい合った作品があるのも事実。
要は、作品の楽しみ方や向き合い方っていうのは無限大なのだ。

逆に言えば、ある種の作品が貴方を激怒させるなら、それこそが貴方がどんな作品を愛するかのヒントになったりする。
それがたまたま僕の場合は「テーマを弄ぶ作品」だったっていうだけで。
嫌いな作品が見つかったら、それをヒントにして次は好きな作品を見つけよう。そうするときっと幸せになれるから。

お読み頂きありがとうございました。
ではまた次の記事でお会いしましょう。