「音楽を聴かなければならない」
脅迫観念めいたそんな考えが急に心に湧いた。
理由は色々と推測できる。
例えば、ずっと依存していたSNSを最近見ていないこと。
例えば、SNSの代わりにひたすら本を読んでいること。
例えば、その本が高校時代の僕にとって思い出深い本の作者と同じ作者であること。
今読んでいる本は冲方丁の『光圀伝』なのだけれど、
そもそもこの本を読み始めたきっかけが、最近たくさん本を読むようになって……
「確実に面白い(と僕が思うであろうような)本が読みたい」
と思ったときに、必然的に
「僕が今まで読んだ中でトップクラスに面白かった本の関連作品」
を考えようとして、パッと思いついたのがこの本だったのだ。
勿体ぶらずに言ってしまえば、「僕が今まで読んだ中でトップクラスに面白かった本」の名は……
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: 単行本
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『天地明察』
だ。
高校2年だったか、3年だったかの頃に読んでとにかく大きな感銘を受けた本だ。
暦学者の渋川春海を主人公に据えた歴史小説なのだけれど、これがもう途方もなく面白い。
何より、熱い。
「退屈のしない勝負を望むか?」
これ、主人公の渋川春海に突き付けられる言葉なんですよ。
「暦学」というテーマから推測されるような淡々とした内容は微塵もなく、バトル少年漫画さながらの「熱い勝負」こそがこの本のテーマだった。
高校の頃のギラギラしまくっていた僕にとって、一種のバイブルだった。
『光圀伝』も同様に、ひたすらに熱量のある小説なのだけれど、それは今日の本題じゃない。
天啓のように僕に舞い降りてきた使命感。
それこそが今日の本題だ。
「音楽を聴かなければならない」。
SpotifyやらAmazon music unlimitedやら、今は色々なサービスで幾らでも音楽が聴き放題だ。
どちらかはいずれ始めようと思っていたが、ずっと保留していた。
悩んだ末にAmazon music unlimitedを選んだ。
既に僕のiPhoneにはたくさんの音楽が入っている。
Amazon musicアプリのほうがSpotifyアプリよりも、そういったローカル音楽との連携が簡単なのだ。
登録してさっそく、前々から聴きたかった曲を片っ端から聴いてみた。
色々な曲をダウンロードし、聴いた。
大音量で。
例えば、"ambiguous"。
アニメ『キルラキル』16話以降のOP。
僕の知っている中で、アニメの内容も加味した上で「最高の」アニソンの一つと言える。
いや、作品と何もかもがマッチしてるんですよ……
『キルラキル』は本当に面白いアニメなので、第一話だけでいいのでどこかで見てみてください。合う人は絶対に引き込まれるから。
閑話休題。
大音量で色々な音楽を聴いていたら、なんだか色々な感情が湧いてきた。
急に、なにか僕の中でずっと欠けていたものが満ちていくような、そんな気がした。
今使っているイヤホンVictorの1万円弱のモデルなのだけれど、なんだか高いイヤホンが欲しくなってAmazonで色々探してしまった。
そして思い出した。
……そもそも、僕は最高のヘッドホンを持っていたのだ。
ゼンハイザー 密閉型ヘッドホン HD25-1 II【国内正規品】
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ゼンハイザー HD25-1 II 。
評判は割愛するが、とんでもない名機だ。
……なぜそんな名機を僕は使わなくなったのか?
……要するに。
音楽をそんな聴かなくなってから、使うのが少し面倒になってしまったのだ。
……ハイ。
ここまで前置きです。
じゃあ僕は何故、音楽を聴かなくなったのだ?
簡単な話だ。
SNSと酒で自分の中にある満たされないものや、孤独感や、そういったものの総体ーー余白を、無理やり満たすようになってしまっていたのだ。
SNSと酒に溺れるようになった頃と、音楽を聴くのが面倒になった頃。
その時期が驚くほどに一致している。
そもそも。……そもそも。
僕は何故、買った当時で2万5千円もしたヘッドホンを持っていたのだ?
それも簡単な話だ。
僕は昔、高校の頃から大学の頃にかけて、音楽とオーディオに耽溺していた。
とはいえ学生の手に届く範囲のものしか買えなかったわけだけど。
さて。
耽溺していたオーディオに戻り、高校の頃にハマっていた本を読む。
……SNSをやめて、次に酒から離れて。
僕は……
高校の頃に戻ろうとしているようだ、どうやら。
最も熱苦しく、最もわけがわからなかったあの頃に。
あの頃のことを語ろうとするとキリが無くなってしまう。少なくとも「睡眠時間4時間に削ってギャルゲーしながら勉強してたらメンタルがぶっ壊れた」ってことがあった程度には、無駄に(熱)苦しい生き方をしていた。
……まぁ、今も昔も変わらないのかもしれない。
「3気筒は3気筒で楽しかったけど安定した滑らかさ楽しむなら4気筒選ぶほうがいいかな」とかなんとかグダグダとバイクについて語ってる僕と、「オーテクのわりと安いイヤホンはドンシャリ傾向というか高音が強い」とか語ってる僕に、そこまで大きな差はない。
……要するに、好きなものが一周しただけなのだろう。
何周も、何周もするのだろう。
呪いのように、僕は僕の余白をひたすら埋めていくのだ。
それはそうなのだ。
だが気付いた。音楽はその中でも、とびっきり……素晴らしく、「効く」。
そう言えばそうだ。高校の頃は、ひたすら「血がたぎるような」曲ばかり聴いていた。
ロックもあれば、アニメソングもある。
まさしく「薬物」の代わりに摂取していたのだ。
というより、さっき貼った"ambiguous"で大体の趣向が分かって貰えると思う。
……今は、相当にしっとりした曲も好むようになってるけど。
社会人になってから落ち着いて聴いたスガシカオの『夜空ノムコウ』、効いたなぁ。
二番の歌詞が本当に良いんだ、本当に……本当に。
静も動も、清も濁も、どんな音楽でも、ひたむきに、ひたすらに自分の中に流し込む。
流し込んで、流し込んで、流し込んで、余白をひたすら、無くす。
やってることはアル中と変わらない。
なんとなく……
……自分にはそういった生き方しかできないのだろうな、とか。
何故か酷くアンニュイな気持ちになってしまって、殴り書きしてしまった。
僕は基本、ブログを書いたときは推敲もせずさっさと公開してしまって、後で推敲する(それはもはや推敲と言えるのか?という疑問は正しい)
だけど、この記事に関しては殴り書きした後に踏みとどまった。
自分にしては珍しいことだった。
理由はよくわからない。
多分、誰か読者の方で分かってくれる人が一人くらいいるだろう。
それでいい。
それくらいの丸投げは、たまにはあってもいいだろう。
お読み頂き、ありがとうございました。