Midnight Note

明日はどこまで行こうか。どこまで行けるだろうか。

「マンガ好きなんだけど、オススメは『ONE PIECE』と『鋼の錬金術師』かな」

こんにちは、Mistirです。

タイトルを見てどう思われただろうか?
イラッとされただろうか?

イラッとしたならば、その理由は何なのだろうか?

実はこれ、突き詰めると難しい話なのだが、なんというか……
各ジャンルには、「最適解と言えば最適解なのだけれど、他人に何故か勧めにくい」という、微妙な立ち位置の作品が……
少なからず存在する。

そのことをずっと語りたかったので、そんなお話です。

 

 


他人に『鋼の錬金術師』を勧めにくい理由

別に本人が好きなら何を勧めても良いはずなのだが、何故か勧めにくい。
「面白いこと」がもはや常識になっているし、知名度が明らかに高いからだ。
やっぱり他人に教えるなら、常識の外……相手が知らないであろうものをオススメしたいよね。
相手にもよるだろうけど、相手がマンガ好きだって分かってる場合に「『ONE PIECE』がオススメだよ」とは言わないほうが良いだろう。変な話だけど。
ちなみにONE PIECEは最近また展開が盛り返していて面白いよ。


別に何を他人に勧めようが個人の自由なのだが、やっぱり他人から「オススメの漫画」を問われる時、相手の言葉には「自分の知らない漫画を知りたい」っていうニュアンスが含まれてると考えるほうが自然だろう。

……さて。
この話は「漫画」ってテーマなら分かり易い。
やっぱりなんやかんやで日本人は漫画が大好きだし、「ほとんど漫画は読みませんよ」って人でも『ONE PIECE』くらいは知ってる場合がほとんどだからだ。

……でも。
それが、他のジャンルだった場合は?

ある人は、僕にこう言うかもしれない。
「好きな作品勧めればいいんじゃね?」と。

だけど。
違うのだ。色々な思惑が混ざるのだ。
「本当に勧めて良いのか?」と。
その複雑で矮小な僕の心に、ほんのわずかでも同意して貰えればこの記事の目的は達成されることになる。
めっちゃ普段からモヤモヤするのである。

……つまるところ、「あるあるネタ」として気楽にお読みいただけると幸いです。


小説編

僕がこの世で最も素晴らしいと思っている小説はもうはっきりと二冊、決まっていて、一本目はこのネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)

 

 気付いたら電子版も合わせて三冊家にあった。理由はよくわからない。

二本目は『ダンシング・ヴァニティ』

ダンシング・ヴァニティ (新潮文庫)

ダンシング・ヴァニティ (新潮文庫)

 


……なのだが。
これがぶっちゃけ、どっちもわりと……
「初心者向け」 小説じゃない。

「普段は小説読まないんだけど、何かオススメある?」って聞かれて答えていい本じゃないと思ってる。
前者の『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』はものすごく顕著で、文体は完全に軽妙なライトノベルのそれなのに、情報の密度や登場人物の感情を本気で読み解こうと思ったら相当に高度な読み方が必要っていう、そういう小説だ。
ちなみに僕はもう10回くらい読んでるけど、読むたびに印象が変わる。

後者の『ダンシング・ヴァニティ』は思いっきり筒井節なので、合う人と合わない人がいるだろう。

……さて。
ならば、「普段は小説読まないんだけど、何かオススメある?」って聞かれて答えて「いい」本はなんだろう?


パターンその1

伊坂幸太郎

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)

 

 

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

 

もうね、最適解すぎるよね。
『あるキング』とか読みにくい作品もあるんだけど、ほぼ全て凄く読みやすくて、あまり癖がなくて、面白くて一気に読んじゃう。
するする読めるのに骨格が凄くしっかりした物語書く人なんだよね。

あるキング: 完全版 (新潮文庫)

あるキング: 完全版 (新潮文庫)

 


でも、それゆえに「伊坂幸太郎がオススメです」って言いにくいよね。
面白いのに。なんか言ったら負けだと思っちゃう。
エンタメ作家としてあまりにも有名だからね。
負けてるのはそんなひねくれた心の僕だよね。
「普段から小説読まない人になら伊坂幸太郎をおすすめできる」なんてことを言うと、まるで伊坂幸太郎読んでる人を普段から小説読んでない人呼ばわりしてるみたいになっちゃうけどそういうわけじゃなくて……
ああ、この気持ちを上手く伝えたい。伝わってくれ。

パターンその2

西尾維新

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

 

 

戯言シリーズ 文庫 全9巻 完結セット (講談社文庫)

戯言シリーズ 文庫 全9巻 完結セット (講談社文庫)

 

もうね、西尾維新って西尾維新好きって分かってる人以外に勧められないよね。
ソファでゴロゴロしながら厨二の心を思い出して読むには良い小説なんですよ、ホント。読むと楽しい。 
でも、あまりにも癖があるし、下手に『化物語』のアニメなど知名度が高すぎて……
オススメの対象として挙げて良いのかわからない。
というか、勧めた瞬間厨二病と思われても仕方がないくらい濃い。

ということで他人に西尾維新を勧めたことは僕はない。
……けど高校の頃、西尾維新読んでて楽しかったなぁ。久々に読んでみよっかな。

パターンその3

村上春樹
 

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

 

  

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

 

 

いやー、もうね。
うん。もうね。

僕、村上春樹大好きなんですよ。
村上春樹の世界は、「来そうだったのに来なかった世界」を描いてる。
少なくとも、「こんな未来があるかもしれない」と感じられたような「時代」は、確実に日本に存在したのだ。

……だけど、まぁ。
なんというか。
……勧めにくいなぁ!!!!

海辺のカフカ』とかすっごい複雑な世界観描いてて、読み応えも凄くて、細部の描写もとても良い。
例えば『色彩を持たない多崎つくる』なんかは変なレビューの方が話題になっちゃってるし、本編を読んだ感想としてもちょっとそれ物語の謎を言葉で語り過ぎなんじゃないかなぁって気がしたんだけどさ。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫)
 

海辺のカフカ』の細部の描写って凄く複雑で、何度か読んでみても面白いんだよね。あまり多くを語らない小説だし。

……けどなぁ。
勧めにくいなぁ!!!!

小説編はこんな感じ。
さあ、とっとと映画編に行こう。

映画編

いや、もうこれは一作品しかないですよ。

なんやねんお前。
映画として完成されすぎやろ。

人間ドラマとしてもミステリーとしても社会派批評ドラマとしてもエンタメとしても良く出来過ぎてる。
まぁただ初めて見た時「急にジャンル色々ぶっこみすぎじゃね?なんかきっちり混ぜてるっていうより急に別ジャンルに『引き戻された』ような感じを受けるんだよなぁ……」という感想は抱いたけど。
そんなの些細な問題で、やっぱこいつは映画として完成されすぎている。

だからこそ僕はこの映画を誰にでも勧められる映画だと……
言いたいけど……

良いのかそれは!?


という話を映画好きの友人とするのだが、結論は
「ショーシャンクを勧めるのはやめとこう」
になってしまうのだ……

なんというか、映画の砲撃範囲が「万能」すぎて「勧める人の好み」が全く見えないっていう、映画トークをする上であまりにも大きな欠点がある。

ということで僕は他人に映画を勧めるときは、『LIFE!』と『127時間』をお勧めします。

 

 

127時間 (字幕版)

127時間 (字幕版)

 

いや、僕の中での「好きな映画ランキングダントツ1位」はこっちなんだけどさ……

百円の恋

百円の恋

 

これは勧める相手を選ぶなぁ……
ちなみに前二度目観た時、なんか冒頭からちょっと泣いちゃって、ラストシーンでアホみたいに泣いてました。思い入れが強すぎる。


はい。
ということでこの記事は小説と映画の話をして終わりでも良いんだけれど。
もう一つだけ。
もう一つだけ話させて欲しい。

僕の人生そのものでもある、バイクの話を。

バイク編

「完璧なもの」ってなんなのだろう。
その答えが、ここにある。

CB400 SUPER FOUR / CB400 SUPER BOL D’OR | Honda

 

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CB400Super Bol d'orというバイクがこの世に存在する。


……このバイク、「完璧すぎてこのバイク以外に乗れなくなるからこのバイクを選ばない」っていう人もいるくらいのバイクなのだ。
どう完璧なのか……誰も興味が無いと思うのでここでは語らないが、バイクに乗っている人に
「どのバイクに乗っていいかわからないんだけど、とりあえず日本で買える最も完成度が高くて後で絶対に困らない、後悔しない最善のバイクが欲しい」
って相談すると、多分相当な割合の人が自分の乗ってるバイクでなく、このバイクの名を挙げると思われる。マジでそんなバイクなのだ。
見た目も控えめに言ってものすごくかっこいい。……と思う。

というか、僕も欲しいのだが……「このバイクは買ってはいけないという気がする。
なんというか、もっと「欠点があるバイクを自分の手で完璧にしたい」というか。

で、なんでわざわざ話題を出したかって言うと……

まとめのようなもの

世の中の「好きなもの」って、「完璧であるが故に好き」っていうよりも。
「その欠点をどう受け入れるか」によってこそ、逆説的に「自分の求めてるモノ」だとか「自分」が見えてくるもんなんだなと思ったりする。
とりわけ、僕のような多少なりともひねくれた人間には。


ちょっとクセのあるものこそが、自分にフィットするってことがすごく多くて。
でもそれを他人に勧めていいのかわからなくて。
だからといって「ほぼ万人にフィットする」ものを勧めるのが正解とも言えなくて。

漫画に話を戻すと、例えば『鋼の錬金術師』って、あれだけたくさんある漫画の中だと相当に「万人にフィットする」って言っていいものだと思う。
もちろん好みの幅は大きいだろうけど……

もちろん、「鋼の錬金術師」を全力で他人に勧める!っていう人もいるだろう。
「万人にフィットするから」みたいな消極的な理由じゃなくて、「誰もが面白いと思う漫画でも、自分はもっともっと面白さを知っている!」という自負があって勧めるっていう人もいるのだろうな。

でも僕みたいな人間は、こう……ガッと癖のあるものをあえて他人に勧めたくなったり。その一方で、「うおおおおハガレンおもしれええええ!!」ってなってたり、色々複雑なんだよね。

ということをCB400SBの写真眺めてたら思うんですよ。うん。

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はぁ、本当にカッコイイなこのバイク。

と、そんな色々な複雑さが混ざりあった気持ちでこんな記事を書きました。
好きの形って、色々あっていいんですよね。

お読み頂きありがとうございました。
ではまた次の記事で。