どこかの誰かが言っていた。
『secret base 〜君がくれたもの〜』を聴くと、存在しない夏の記憶が蘇ると。
(原曲配信してないのでClariS版です)
どこの誰かが言ったか覚えてない。
そもそも本当にsecret baseだったかも定かではない。
もっと言えば音楽ですらなかった可能性もある。
けれど、なんとなく言いたいことは分かる。
否、なんとなくどころか。
……途方もなく、分かる。
そもそも、日本人の500%は「夏の思い出」という概念に弱いのだ。
それはもう大体のゲームにおける火属性のキャラの弱点が水属性であるように、大体の日本人に「夏の思い出」という概念は刺さるのだ。
ソースは僕だ。
文句あるか。
さて。
Apple musicでいろいろな曲を仕事しながら流し聴きしていると、「……ん?」となることがある。
もう一度聴いてみる。
「……これ、凄い曲じゃね?」
もう一度聴いてみる。
「いや、もう一度聴いてみるまでもなく……とんでもねえ曲じゃね?」
そんな一曲。
鈴木このみ『アルカテイル』、PCゲーム『Summer Pockets』OP。
後になって『CLANNAD』等で有名なKeyのゲームのOPだと知って、心から納得感を覚えた。
ピースがはまった、というか。
残念ながら、筆者はギャルゲーにはあまり詳しくない。
だがそんな筆者ですらKeyのことくらいは必修科目として知っている。
おそらく、こんな記事を読んでくれている画面の前のおまいら(死語を通り越し化石である) でも名前は知っているだろう。
とにかく、だ。
細かいことはいい、『アルカテイル』を聴いてみてくれ。
これは……
存在しない夏の思い出じゃない。
「存在した夏の思い出」そのものだ。
……。
大丈夫。
僕は記憶障害ではない。
ついに現実の辛さに耐えきれず、ギャルゲーの世界に心が囚われ、ありもしない過去を作り出したわけではない。
でも、伝わるはずなんだ。
これは「オタクの知っているオタクの夏」なんだ。
わかるだろうか?
あの頃は良かった
勘違いしないで頂きたい。
僕は「あの頃は良かった」などと言う奴が嫌いだ。
大抵の思い出と過去なんて、それこそ記憶の機能によって美しく飾られているだけのクソなのだ。
そう、クソなのだ。
……そんなクソな日々の中で、僕らはオタクになってしまったのだ。
多少なりとも救われていたのだ。
救われきれなかったとしても。
これは持論なんだけれど、僕はオタクというのはどこか後ろめたさを抱えているべきものだと思っている。
これはだいぶ前に書いた記事で、今ではまた状況が変わっているし時代の認識に浅い点があるけれど、思考の本筋は変わっていない。
後ろめたさのないオタク趣味など、恥じらいのないエロスのようなものだ。
もちろん他人に趣味を公言するな、という意味ではない。
ただ、やっぱりどれだけアニメなり美少女ゲームなりがパブリシティを得ようとも、どこかしら「俺だけの救い」であってほしいという気持ちがある。
余談だが、某女性VTuberと某男性VTuberが公認カップリングみたいになってて、ファンも全員それを受け入れてて、良いとか悪いとか以前に「すげぇな……」と時代の変化を感じたのは少し前の話。
閑話休題。
上の『さよなら絶望先生』の記事で、『Fate』について「2007年時点で中学生にとってはよくわからない存在だった」と書いたら過激派のオタクから
「2007年で既に有名だったんですがぁ!!!???浅い人間ですねぇコポポポゥwwwwwww(要約)」
と罵られてしまった。
原文は上の記事のコメントにそのまま残っているが、なんというか「浅い人間」という罵倒があまりにも味わい深く素晴らしい。100点です。
それはさておき、僕が言いたかったのは「今だと中学生でFGOやってるやつらなんてザラにいるけれど、当時中学生でリアルタイムでFateを知っていたのはそれと比べると多めに見積もっても遥かに限られるのは間違いない」ということだ。
僕の想像よりは多いのかもしれないけれどさ。……深夜アニメ見てた中学生とか、ギャルゲーに没頭していたやつとか。あるいは単純にPS2の新作ゲーム追っかけてたやつとか。
でも。
実際の総数は重要じゃない。
問題は、「マイノリティ寄りの趣味を持っている」と当人が感じているかどうかなのだ。
2007年時点で「俺はギャルゲー大好きだしギャルゲーはマジョリティ寄りの趣味だぜ」と言い張る中学生はいたかもしれないけれど、そんな業剛の者の話は知らん。
要するに、少なくとも僕は中学生の頃、Fate(もちろんPS2版です) やっててスゲー背徳感というか、「俺だけのもの」感があったことを覚えてるぜ、ってことだ。
今そんな感情持ってFGOやってる人は少ないんじゃないか?
そんな思い出を持ってるやつは……
救われてたんだよ。絶対に。
いくら日常がクソでも。
否、クソであればクソであるだけ。
日常を逆光の中に埋め尽くす、オタクコンテンツたちは、輝いていたんだよ。
ああ、逆光は身体を黒く埋め尽くす。
http://j-lyric.net/artist/a04d013/l021e75.html
日常が闇だとして、それを照らす光もまた、日常の一部だった。
そんな闇を今のオタクは感じていない、などと言うつもりはない。
オタクにはオタクそれぞれの闇があり、光がある。
けれど、抱えている後ろめたさだとか、そういったものの総量が闇と光を明確に映し出すのは間違いないと思っている。
この闇は感じていることが幸福であり、同時に不幸でもある。
……。
さて。お聞きください。
鈴木このみ、『アルカテイル』
なんというかマトモな曲の解説一切してないんだけど、十分伝わると思う。
否、伝わる人に伝わればいい。
この曲を聴けば、「帰れ」るのだ。
少なくとも僕は「帰れ」た。
そりゃ一番手っ取り早いのは過去の曲そのものを聴くことなんだろうけどさ。
『もってけ! セーラーふく』聴いてもいいし、『鳥の詩』聴いてもいいし、『アンインストール』聴いてもいい。世代がずれてたらゴメン。
でも、世代が合ってるとか合ってないとか、そういう問題じゃない。
そうじゃないんだ。
何故かこの2年前の歌に、「あの過去の夏」が全部詰まっていた。
少なくとも僕はそう感じてしまったのだ。
それだけの話なのだ。
終わりに
なんかもうすぐ完全版出るみたいですね。買おうかな……
Switch版は発売中。悩ましい。
お読み頂きありがとうございました。
ではまた。