こんにちは、Misitrです。
音楽を聴くとき、どうも自分はメタに考えすぎる傾向がある。自分の出自が文学部ということも理由なのだが、なんというか、一種のクセのようなものだ。
アルバムのどこにどんな曲が配置されているか?
そのアルバム自体どういった意味を持っているか?
最後の曲は何を語るのか?
僕の知る限り、ClariSはそんなメタ戦略が異様に上手いアーティストだった。
そして。
この2分割10周年記念ベストアルバムで、それは極致に達した。
こんなもん語れるか
何かこのアルバムについて語りたいのだけれど、とても難しい。
あまりにも難しい。
なぜ難しいのか、今回はそれ自体について語りたい。
ClariSというアーティストはSeason 01とSeason 02に分かれていて、Season 01はクララとアリスで2014年まで、Season 02はクララとカレンで2014年以降現在まで活動している。
今回のベストアルバムは2分割になっているが、「Season 01をPinkに」「Season 02をGreenに」という配分ではない。
例えばPinkには3曲目にSeason 02の名曲である『Gravity』を配置していて、この時点でファンとしては「あ、Season 01と02で分けてるわけじゃないんだな」と勘付くわけだ。
PinkとGreenは現メンバーのクララとカレンそれぞれのイメージカラーだ。つまりそれぞれのイメージに近い曲を配分した……
そう解釈するのが妥当に思える。
そう思える……のだけれど、どうも単純にそういうわけではなさそうだ。
というのも、Season 01からずっとメンバーであり続けているクララのイメージカラーのPink側。
こちらにはSeason 01のセルフカバー (というよりメンバーチェンジ後の再録) バージョン、それもこれまでにシングル等に収録されなかったものが、なんと4曲も収録されている。
つまりこれらは実質的に新曲だ。
少し考えてみてほしい。
なぜ、PinkとGreenにこれらの新曲を均等に分配しなかったのか?
その答えはエンディング曲にある。
Pinkのエンディング曲『仮面ジュブナイル』と、Greenのエンディング曲『PRECIOUS』だ。
実際のところ、このベストアルバムについて語るということは……
この2曲について語るということだ。
だが。
……僕には、語れない。
あまりにも重い
僕はClariSについては、これまでに相当語っている。
一方で、間違いなく言えるのだが……
僕はClariSオタクとは言えない。
ライブには行ったことがなく、グッズの収集等もしていない。
ただ一人の音楽好きとして、好きだ、と。
そう言える程度なのだ。
(むしろ深入りするのが恐ろしく、距離を置いてすらいる)
これは僕がこれまで聞いてきたアルバムの中で最も恐ろしいメタ戦略を張っていた『SUMMER TRACKS -夏のうた-』および、その恐ろしすぎるエンディング曲『Summer Delay』についても同じように言える。
mistclast.hatenablog.com
『ClariS』というアーティストを贔屓目に見て「このアルバムすげえ!」って言っているわけではない。「このアルバムすげえ!」と、純粋にただ、そう言っているだけなのだ。
もちろんそれを繰り出したClariSというアーティストは凄いわけだけれど。
だが。
『仮面ジュブナイル』『PRECIOUS』について語るためには……多分、それでは足りない。
いや、もちろん語る権利はあるのだ。誰にでもある。僕にもある。
まわりくどくなってしまった。
端的に言おう。
『PRECIOUS』聞いた人ら。
これ、10年近くClariS追いかけてきた人ら、声出して泣いたんじゃねえかな……
いやぁ……だって俺ですら泣いたんだもん……。
冗談抜きにこれ、キリストの復活を目の前にした信者みたいになったと思う。
多分僕がその「凄さ」みたいなのをいくら語っても、「足りねえよ!!!!!」って我右の頬を殴られちゃうと思うんだよ。それなら左の頬を差し出すけどさ。
「-Green Star-」に収録される新曲「PRECIOUS」の歌詞の一説である「特別な今日は みんなと 素顔のままで 逢いたい」というフレーズのように、10周年記念日に配信した特別なライブで仮面を外し、新たなステージへ進むClariSの強い意志が表れていた。
この記事にあるように、ClariSがこれまでにどのような歩みを進めてきて、どれだけ最高のタイミングで、この曲と素顔をファンに見せてくれたのか、っていうのは、語ろうと思えばいくらでも語れる。
でもいらないだろう、もう。
多分、『PRECIOUS』はあまりにも多くのファンを尊死させたはずだ。我も死ぬ。
『PRECIOUS』は、Season 02の第一期エンディング曲であり、第二期オープニングテーマであり、そして……
ファンの心に刻まれる、ClariSの最高傑作のひとつになる。そう確信した。
多分今後エレファントカシマシにおける『桜の花、舞い上がる道を』とか、サカナクションの『目が明く藍色』とか、そのあたりの位置に収まる曲になる。
……分かりにくい?
要は、タイアップ曲だけ知っている人は知らない可能性もあるけれど、アルバムまで聴き込んでる人が「最高傑作は?」って聞かれたら選びがち、みたいな。
じゃあ『仮面ジュブナイル』は?
一方の「仮面ジュブナイル」はなんなのだろう?と考えると……
実はこの曲はこの曲で「エンディングにしてオープニング曲」なのだと思う。
「Season 01のエンディング曲」ではない。
それは『Orange』だ。
じゃあ何のエンディング曲にしてオープニング曲なのか、というと……
これは僕の考えなのだけれど、「これまでのミステリアスで、正体の掴めない、だけどKAWAIIアーティストであるClariS」としてのエンディング曲で、そして再オープニング曲なのだと思う。
「ClariSのことをよく知っている」。
そんなことを言えるファンが、どれほどいるだろうか?
ClariSというアーティストは、本当によくわからない。
『コネクト』のイメージで聴くと『ひらひら ひらら』でまず右の頬を殴られ、『シニカルサスペンス』で左の頬を殴られ、そして『ヒトリゴト』で慰められることだろう。
正体不明だからこそ、なんでもできる。
全貌が掴めない。
アニソンアーティスト?レトロフィーチャーなアイドル?
そんな、よくわからない存在。
……だが、素顔を露出するようになったというのもあり、だんだん「ミステリアス性」みたいなものは特徴として弱くなってきているのかな、と感じる人も多かったと思う。
素顔を見せてくれるのは嬉しいけれど、なんと言うべきか、正体不明の存在でいてくれてもいい。
そういった厄介なファンもいるわけだ。
この記事の筆者である。
……だが、仮面ジュブナイルを聞けばもう心配も何もない。
ClariSは「仮面をつけたアーティスト」として今後も新しい景色を見せてくれるのだろう。
……で、だ。
結局『Pink』と『Green』ってなんなんだろうね?
まずはPinkから聴いた、というファンはとても多いはずだ。
さっき語ったように、実質新曲がとても多いこと、それから「真の完全新曲」である『PRECIOUS』よりも『仮面ジュブナイル』の方が時系列上発表が先行する曲だからだ。それに、ClariSファンは1曲目が『irony』ってだけで、条件反射的に「こっちから聴くべきだ」と判断するのだ。
そして先程も言ったように3曲目に『Gravity』があることで「ん??」となる。
それはそうと、Pinkのエンディング曲である『仮面ジュブナイル』を聞けば、まずファンは安心する。
「この人ら、絶対に解散する気ないな!!!!」と。
余談だがアニソンアーティストファンは全員「アーティストが急に活動しなくなる」ことを何よりも恐れているのだ。それはClariSのような大御所でも変わらない。
一方で、正直に言おう。
『仮面ジュブナイル』は、ClariSの二人の世界観が前面に出されすぎていて、「分かっているファンのためにリソース全振り」のような曲だ。
どう聞いても一種の「ファンサービス」ソングなのだ。
多少のむず痒さがあった。これが10周年記念ベストアルバムのエンディング曲であることに。
だが。
やられた。
完全にやられた。
もう完璧に殺された。
『PRECIOUS』に。
そして理解した。
『Pink』は、Season 01、02を問わず、「これまでのClariS」に思いを馳せるためのアルバムだ。
そして、『Green』は……「これまでのClariS」を全て知った上で、「これまでのClariS」が決して終わらないことを理解した上で……
「その続き」を歩むための、一歩目のアルバムだ。
「Season 02でのカバー4曲」『仮面ジュブナイル』『PRECIOUS』はたったの合計6曲だけれど、もうこの6曲がこのベストアルバムを、ベストアルバム以上のものにしてしまっている。
話を戻すと、『仮面ジュブナイル』同様、『PRECIOUS』も「ファンサービス」だ。
だが。
もうなんていうか、破壊力が違う。
まず純粋に、あまりにも曲が良い。もうあまりにも曲が良い。
そしてとても曲が良い。
とても曲が良い。
……要は、なんというか『仮面ジュブナイル』を聞いて抱いた不安のようなものが、一瞬にして消えていったのだ。
「うん、分かってる。私は全部、分かってる」
と、そう言われた気がしたのだ。
……誰に!?
僕が信頼するもの
僕は、ClariSのファンを信頼している。
「ソロで歌って欲しい曲」4曲の選出で、『ひらひら ひらら』『recall』『Dreamin'』『泣かないよ』が選別されるような、そんなファンの厚さと熱さを信頼している。
特に『ひらひら ひらら』が選ばれたことには拍手喝采した。
よく分かってるなぁ!!!!!
……何様なんだ貴様は。
そんな批判は甘んじて受けよう。僕はただの限界が近いオッサンで、ClariSのにわかファンだ。今は限界を超えてブログを書いている。しんどい無理。
まあ要するに、そんなにわかファンの僕だが、ClariSが大好きだし、ClariSのファンも大好きなのだ。
ClariSの世界観を構築してきたのは、ファンの存在が非常に大きいだろう。
だが。
その中に、『最上のClariSファン』が存在している。
誰よりもClariSを愛し、誰よりもClariSを理解する存在。
そう。
ClariSのスタッフ、ClariSに楽曲を提供するクリエイターの皆さんそして……
丸山真由子氏(以下敬称略)だ。
好きなアーティストはたくさんいるけれど、ここまで「関係者全員が全力で理解して愛しているアーティスト」となると、ClariS以外思いつかない。
というか僕の好きな他のアーティストは全員自分で曲を作っているパターンばかりだ。
僕の主観を差し引いても、この愛情の深さは異常だと思う。
特に丸山真由子という名前をピンポイントで挙げたのは、少し躊躇ったけれど、どうしても必要だった。
「渡辺翔氏の名前も挙げるべきだろう!」とか、読者としては色々言いたいことはある
と思うが、どうか許して欲しい。
『PRECIOUS』を聞いたときの心の動きを文章にしてみよう。
「……!!!!!これ、丸山さんだよな……丸山……うわあああああああああ丸山さん……ClariS……丸山さん……アリス……丸山さん…………………………………………」
ここで死んだ。完全に死んだ。
いや、こんな気持ちにさせてくれる「アーティスト『集団』」ってClariSだけだと思う。マジで。
一生信頼します。一生ついていきます。
結論
「語れない」というタイトルで5000字になりました。
それが全てです。
夢の続きを 一緒に
ClariS 『PRECIOUS』
お読み頂き、ありがとうございました。
元気ならまたいつか何か書きます。