以前、Gショックの沼に落ちた。
だが。
このとき、もう既に。
既に腕時計の沼に落ちていたのだ。
より深い沼へ
Gショックの沼に落ちた僕は次に、軽くて薄いアナログ式のソーラー電波時計が欲しくなった。
Gショックで「1秒たりとも狂わない時計」の魅力に気付き、それでいてラバー式のGショックのように軽い腕時計が欲しくなったのだ。
良いデザインのものを探してみたら、10万円程度で良い時計を見つけた。
これまでに買ったGショックで最も高いものでも7万円程度だったので、非常に悩んだ。
だが生き物大好き系の友人がたくさん高額な爬虫類を買ったりしているのに感化され、勢いで買ってしまった。
さて。
もう、この先の展開が読めてしまっただろうか?
そう。
10万円は、高い。
確かに、高い。
だが、タイトルの「とても高い腕時計」ではない。
結論として、その時計は悪くないものだった。
想定通り、軽く、薄く、狂わず、電池交換も不要で、格好良い。
何の不満があるだろうか。
……残念ながら、あったのだ。
不満が。
針である。
針が安っぽかったのである。
針の質感がどうしても全体の質感に見合っていなかったのだ。
その腕時計の特定を避けるため、ここでは詳細をあまり語らないでおきたい。
今回の本題はその腕時計の批判ではない。
そのときに知ったのだが、そもそも一般的な電波ソーラー時計などのクオーツ式の場合、質感を伴う重い針を動かすのは技術的に困難らしい。
実際、同価格帯の腕時計を色々見てみたが、僕が望む「針の質感」を満たすものは存在しなかった。*1
そして僕は10万円を使った直後だというのに、理想の腕時計を探し始めた。
探した結果、見つけてしまった。
グランドセイコー SBGA469「勝色」である。
お値段、638000円。
僕はグランドセイコーという腕時計を「誰があんな地味な腕時計に大金払うねん」と思っていた。
もともとクロノグラフのような機械感のある腕時計が好きだった。
だが。
針の質感、という点にフォーカスして腕時計を選んでみると……
グランドセイコー以上に美しい針の時計は無かった。
否、針だけではない。
今なら分かる。
昔はただの地味な腕時計に見えた「それ」が、どれだけハイレベルなプロダクトなのかということを。
文字盤を見て欲しい。
黒にすら見える、濃紺。
武士が演技を担ぐために用いた色で、通称を「勝色」。
岩壁をイメージした立体感のある盤面が、その「勝色」で染められている。
僕は青の腕時計が好きだ。
疲れているときも、腕時計を眺めているとモヤモヤしたものを吸い込んでくれる気がするから。
スプリングドライブという機械式でもクオーツ式でもない第三の駆動方式を採用していて、機械式のように電池不要で動きながら、クオーツ式のように狂わないらしい。
そういった技術にも惚れてしまう。
念のため家電量販店でグランドセイコーの実物を見てみた。
……美しい。
美しすぎる。
プロダクトとしての完成度が、違う。
あー、これはダメですわ。
こいつに魅了される人の気持ちがよく分かった。
この時点で「薄くて軽くて狂わない時計」のようなカタログスペック的な物欲、言い換えると大義名分は消え去っていた。
そこにあったのはひたすらに純粋な物欲である。
……うん、決めた。
何年か経ったら買おう。
……
1ヶ月後。
僕は選択を迫られていた。
プライベートで色々あり、自尊心がダメになっていた。
そんな僕に悪魔が囁いた。
「高い腕時計を身に着けたら、自尊心も上がるかもよ?」
悪魔の戯言だとは分かっている。
そう、これは物欲に体の良い理由がついてしまっただけなのだ。
悪魔は囁く。
「勝色だよ?勝てるよ?」
僕は悪魔に負けた。
雑魚である。
さて、買うと決めてしまったからには買い方が問題である。
このSBGA469「勝色」、まさかのオンライン限定商品だ。
なので先程述べた実際に見た実機も、厳密には別の製品である。
それにしても。
嘘だろお前。
638000円、オンライン限定。
……嘘だろお前。
高級腕時計の世界、どうなってんだよ。
そもそも60万円付近でこの腕時計「コスパが良い」とか言われてんだよ。嘘だろ。原付き2台以上買えるぞ。
せめて、せめて分割払いを……
ふっざけんな馬鹿。
2回払いくらいさせろよ。
そりゃ後から分割で3回払いにできるけどさぁ。
利息高いんだよな……
中古美品を無金利ローンで買うという手もあった。
だが、グランドセイコーは正規ルートで買えば購入者限定のオーナーズクラブに入れるのだ。
修理履歴なんかもここで管理してくれるらしい。
マジでふざけんなよお前……
あああああああ……!!!!
やっちまったわ……!!!
一括払いじゃ……!!!
どうなっちゃうの私!?
なお、この記事はセイコー関連のアフィリエイトは一切含まれておりません。
なので上記グランドセイコーのサイトから何か買ったとしても僕には1円も入らないので、安心して638000円払ってください。
そして余談ですが、SBGA469「勝色」とSBGA211「雪白」はだいぶ悩みました。
雪白の方が軽いし。
けど最後の決め手はやっぱり濃紺に惹かれたことです。
お読み頂きありがとうございました。
後編に続きます。
そっちが本編です。
この記事は前フリです。
*1:厳密にはknotの機械式がかなり良かった。だが、どう頑張っても後述するSBGA469の代替品にしかならないな、と思い購入には踏み切らなかった。