Mistirです。
朝から色々と凄い記事を読んでしまった。
……凄く、色々と考えさせられる。
少しだけ語りたい。
「セーフティネット」としての「デマ」
話の筋自体は、実を言えば「ありふれている」とさえ言える。
「人生に行き詰まった結果、セーフティネットとして存在する『良くない』仕事に手を染めた」。
乱暴にまとめてしまえば、筋書きとしてはそれだけの話だ。
今回は、その「セーフティネット」の役割を「デマサイトの構築」が担ってしまった、という話だ。
だが、この記事には考慮しなければならない要素が二点ほど混じっている。
仮にこの記事に出てくる「デマサイトの運営者」を「A氏」としよう。
・「デマ」は必ずしも法律を犯していない、という事実
・A氏が「就職できていた」という事実
だ。
それぞれ、語っていこう。
「デマ」は必ずしも法律を犯していない
「デマ」が必ずしも法律に触れるかと言えば、そうではないようだ。
デマを流すことそれ自体が、ただちに法律に違反するわけではありません。ただし、デマによって他人の仕事を妨害するような事態になってしまったような場合、偽計業務妨害罪に問われてしまう可能性があります。
A氏の「デマサイト」がどのようなものか確認する気になれないが、おそらくは「偽計業務妨害」や「名誉毀損」に当たらないようなギリギリのラインを攻めていたのではないか。
あまりこういう言い方をしたくないけど、それはビジネスとしては「(少なくとも一時的に稼ぐには)合理的」なやり方だったのではないか、と思う。
と言うのも。
実は、この「ギリギリの法に触れないライン」で「合理的」なやり方について、心当たりがある。
さて、このA氏の目的が何なのか?ということですが、おそらくは、他者の商標を先取りして出願をし、その商標を使用している人に権利を売却して利益を得ることが目的ではないかと思われます。
「PPAP」の商標登録出願で有名になったベストライセンス社だ。
※この記事でも件の人物が「A氏」として扱われてて紛らわしいですが、この「A氏」はベストライセンス社の運営のことです。念のため。
一見、法の穴を突いた嫌らしいやりかたを「合理的に」実行しているように見え、なかなかある意味では感心させられてしまった。同時に反吐が出たけど。
……もっとも。
調べてみますと、このA氏とベストライセンス社により出願されたもので商標登録が認められているものは、現在のところ、たった5件しかありません。
これだけ大量の商標出願がされていても、出願手数料の支払いもせずに、ほとんど商標登録されていない、というのが実態です。
ベストライセンス社のやり方は相当に「雑」いらしい。
残ったのは悪評だけなんじゃないか……
一方、話を戻して。
「デマサイト」の構築について。
コレはなんというか、「仮に法に触れないギリギリの範囲を狙っていたとしたら」という前提付きだけど、もう「合理的」という以外言いようが無いんじゃないか。
最初から存在する「韓国を憎む人々」を明確にターゲティングし、適切な「ソリューション(=デマ)」を与えてあげる。
皮肉なことに。
就職からあぶれたこのA氏は、一人で「巧く」ビジネスをやっていたわけだ。
……。もちろん。僕は、それに対して「やるせない」と思っている。
決して賞賛は、できない。
だけど、誤解を恐れずに言えば……
非難する気にもなれないのだ。
それが、次のテーマ。
A氏が「就職できていた」という事実
そう、A氏は「就職できていた」のだ。
でもそれは「失敗」だった。
しかし望んでいた研究職に就くことは叶わず、IT系の中小企業にSEとして入った。
「ホワイトでクリーンな企業を求めていたんですけれども、実際入ってみると、ブラック企業で…サービス残業があって、タダで働くのは馬鹿らしいと思って、やめました」
1年も経たないうちに退職し、今は実家で暮らしている。最近まで転職活動をしていたが、やめてしまった。
……笑えない。
そりゃそうだ。
「タダで働くのは馬鹿らしいと思って、やめました」
その通りだろう、としか言いようがない。
それに、このA氏が就職活動で周囲と自分を比較して、大いに傷ついたことは想像に難くない。
そんな状態でブラック企業に就職して働いて精神をすり減らすくらいなら、「デマサイト」を構築して、第三者の立場から燃料を投げ続けたほうが良いんじゃないか、と同情しそうになってしまう。
「法律にも触れていないわけだし」。
※お察しいただいていると思うが、そのサイトが実際のトコロ「刑法上問題があるかどうか」にはそれほど関心はなく、「デマ」という「倫理的に明らかに良くない」ビジネスが「法に触れず成立しちゃってる可能性があること」そのものを問題としたいのです
さて。
ここまで語ったけど。
言いたいことは、ここに集約する。
「……やるせないよなぁ」
色々と、やるせない。
ベストライセンス社の件だけど、いくら法律に触れていないからといって、実際の権利者やら登録業務を行う方々やらに迷惑をかけて良いわけがない。
良いわけが、ないのだ。
デマサイトのA氏も同じ。
いくら法に触れないからといって、誰かを不幸にして良いわけがないのだ。
本当に、良いわけが、ないのだ。
でも、どうする?
良いわけがないから、抗議する。
これは一つの手だろう。
A氏の甘えが招いた事実だと、非難する?
これは賛同できない。
ブラック企業で働いたツラさは、当事者しかわからないものがある。
「俺もブラック企業で働いていたけど耐えられた?」
そういった論法は、論外だ。
貴方の辛さとあの人の辛さは違う。
想像力の欠如。
結局、甘っちょろいけど、各々が「誰もが最低限の労力で、他人に最低限の迷惑しかかけず、最大限に幸せになる方法」を模索するしか無いのだろう。
そんな社会を、模索するしか無いだろう。
ブラック企業は、過度な就活競争は、「誰もが最低限の労力で」の部分を無視している。
というか、コレを無視している企業やら人がホントに多くて殲滅説教したくなる
デマサイトの構築は、二番目の「他人に最低限の迷惑しかかけず」を無視している。
ある程度の迷惑は仕方ないだろう、生きている限り。
でも、流石に一線を超えている。
歯切れの悪い結論になったけど。
この過度な競争社会では、自分が変わっていくのが、一番手っ取り早い「とりあえず提示できる」解決方法であるような気がしてならないのだ。
それはどちらかというと、解決方法というよりは……
僕個人の、祈りに近い。
ということでこの記事はここまで。
お読み頂き、ありがとうございました。
ではまた次の記事で。