会場にお集まりの皆さん。
皆さんは、ご存知だろうか。
ジャンプには「戦闘狂」がいる。
DRAGON BALLの孫悟空?HUNTER×HUNTERのヒソカ?
否。
漫画というフィールドでひたすらに戦い続ける、そいつの名は山本亮平(敬称略)という。
奇抜な名前ではない。
そう、彼(彼女?)はキャラクターではなく、漫画家なのである。
だが多分、下手な漫画のキャラクターより圧倒的に、彼は戦っているのだ。
そんな彼の話をしたい。
ジャンプ連載一本目:『E-ROBOT』の話
……の、その前に。
僕の中での山本先生のイメージは、『奴隷遊戯』に出てくるテラノさんである。
↓この人
(繰り返しますがイメージです)
多分山本先生は漫画のためなら?
……その溢れ出る戦闘狂的気質をいかんなく発揮できる、そういった人なのだと(勝手に)思っている。
ということで僕の山本先生のイメージをお伝えしたところで、先生のデビュー作である『E-ROBOT』について語ろう。
端的に言えば……
タイトル通り、エロいロボットの話なのだが……
画力もあまり高いわけではなく、というよりそもそも本気で「エロいもの」を描こうという感じでもなく……
要するに「エロ」という言葉を下敷きにしたドタバタコメディだった。
要するにエロいロボットがエロいパワーで世界平和を目指す話である(雑)
しかし、記事にするため改めて第一話を読み直しているのだけれど……
本当、クッソしょうもない。
コレに関しては(褒め言葉) の意味ももちろん含まれてはいるけれど、……
……いや、申し訳ないけど純粋にクッソしょうもないっすわ、うん。
第一話で銀行強盗の縦断をおっぱいの角度で受け流していた。
これだけでいかに下らないか分かるだろう。
「しょうもないけど逆に面白い」とか言って持ち上げることは幾らでもできるのだけれど……
この漫画に関しては徹頭徹尾、本当に下らなかった。
そう、本当に下らなかったのだ。
残念ながら11話で打ち切りだったことが、ジャンプ本誌での評価があまり高くなかったことを物語っている。
……本当に、下らなかった。
……だが。
僕は、打ち切られたとき、寂しかったよ。
だってさ。
本当に下らねえんだよ……本当に。
全然エロくねぇ……
でも逆に、だよ。
この内容で微塵もエロくないまま、下らなさだけで11話突っ切ったんだよ?
そんなの……そんなの。
「信念」がなきゃ、できねえじゃねえか。
俺には……漫画は描けない。
でも、語ることはできる。
この無駄に……本当に、「無駄に誠実な」漫画を語ることができる。
そんな俺に「下らないけどそれが面白い」とか、そんなこと言えるわけねえじゃねえか。
そうだ。
最後までこの漫画は本当に下らなかったんだ。
最終話でラスボスが乳首からビーム出してるし……
(画像略、言うまでもないが微塵もエロくはない)
ちなみにラスボスはエロで世界を支配しようとしている。
で、主人公はおっぱいミサイルを発射するためヒロインのおっぱいを揉む。
で、エロを嫌悪していたヒロイン(人間の方)も改心(???)して、ヒロイン(ロボットの方)のおっぱいを揉んでミサイルを発射する。
……ごめん。
自分で書いてて全く意味わかんねぇわ。
漫画読んでてもやっぱわかんねぇわ。
けど、一貫して「エロは正義」っていうメッセージだけは発され続けてたのよね。
伝わってたかどうかは別にして。
明らかに「エロを描かずにエロをいかに伝えるか」っていう謎の実験をしていた。
それは現実的な話、山本先生の当時の画力に応じた適者生存戦略だったのかもしれないけれど、上のコマを見てもらっても分かるように、この時点で……
狂気の片鱗、そして天才性の片鱗が見えていた……
のかもしれない。
だが、このときはまだ確信していなかった。
この山本先生という人が「戦闘狂」であると。
「強い信念を持った漫画家」であると。
確信に至ったのは二作目『ラブラッシュ』を読んでからだ。
その前に山本先生(本人)のイメージを改めて漫画『奴隷遊戯』作画担当木村先生のツイートから引用しよう。
61話原稿折り返し到達。
— 木村隆志「奴隷遊戯」 (@kimura_doom) September 28, 2019
首痛し。 pic.twitter.com/3tnsp6wBGZ
繰り返すが彼はテラノさんであり、山本先生ではない。
だが僕の山本先生のイメージはテラノさんである。
繰り返すことに特に意味はない。
ジャンプ連載二本目:『ラブラッシュ』の話
表紙から見ても明らかなように、画力が滅茶苦茶に上がった山本先生の二本目の連載作品。
連載が始まったのはジャンプで長期連載された人気ラブコメ『ニセコイ』が終了した直後だったように記憶している。
大人気作品だったが、終盤の評判は芳しくなかった。
やはり長期連載ラブコメは「主人公の態度が煮え切らない場合に読者に負担がかかってしまう」という大きな欠点がある。
長く続けることも大事になってくる少年誌の人気漫画である以上仕方のないことではあるのだが……
ヒロインに対する態度を保留し続ける主人公:一条楽に対するヘイトはどんどん溜まってしまっていた。
そんな『ニセコイ』が終わった直後の、『ラブラッシュ』という作品。
『ニセコイ』と同じく、ジャンルはラブコメなのだが……
はい。
これね。
第2話なんですよ。
大袈裟でもなんでも無く、リアルタイムでこれ読んで魂が震えましたね。うん。
そして同時に山本先生の「スタンス」みたいなものが明確に分かった気がした。
彼は……間違いない。
戦わなければ生き残れない人だ……
だが。
この『ラブラッシュ』にはふたつ、大きなハードルがあった。
一つは未だに連載が続いている『ゆらぎ荘の幽奈さん』が既に人気作品になっていたこと。
悪霊を物理で殴り倒し、性格はトコトン昭和風硬派イケメン野郎という「ヘイトを避ける主人公造形」の究極形態を主人公に据えた、珠玉のエロコメである。
ヘイトコントロールしたまま長期連載したせいで、今では「もう聖人認定したほうがいいのでは?」と言いたいほどの究極超人に成り果てているがそれはまた別の話。
『ラブラッシュ』はラブコメ、『ゆらぎ荘』はエロコメなので、厳密にはジャンルが違うのだが、どうしてもニセコイ後の連載枠として……あるいは「モテる主人公問題」に正面から立ち向かった作品として比べられてしまう運命にあった。
とはいえ、これは次に続く問題と比べたら本当に些細なことである。
その問題を語るために、今更ながら『ラブラッシュ』のあらすじを語ろう。
主人公は特殊な遺伝子で猛烈にモテてしまう。
それで比喩ではなく「天使」のような異世界の存在にもモテてしまうわけだが……
主人公が好きなのは幼馴染。
……で、最初に引用したシーンに続く、と。
……おわかりだろうか?
これさ。
作品の構造的にさ。
「寄ってくる女の子をひたすらフリ続ける作品」にしかならないよね?
当然、そういう懸念があった。
それでも山本先生は面白い作品のためなら?
そういった展開を避けてくれるはずだ!!!!
避けられませんでした。
全2巻、12話で打ち切り。
現実は非情である。
多分、主人公の態度を明確にするという「戦い」が終わった後、その戦いを続けることができなかったのだと思う。
読者にとって……少なくとも、僕にとってはかなりストレスフルな作品だった。
だって、可愛い女の子が色々出てきて無残にフラれていくんだよ?
もちろん主人公が悪いわけじゃない。
じゃあ返事(態度)を曖昧にしてる幼馴染が悪いの?それも違う。
別に誰も悪くない。
ただ……
ただただ、辛い作品になってしまった。
このブログで語られているように、テーマに対しては物凄く真摯な作品だった。
けれどそれを少年マンガ誌で毎週読みたいかというと……
……。
はっきり言おう。
山本先生は、敗北者だった。
二度、負けてしまったのだ。
一度目は「エロ」を「エロくなく」描くという戦いを(何故か)初めて、負けてしまった。
二度目は「ポストニセコイ」の戦場に正面から斬り込み、「恋」とは何かを真剣に描いたものの、結果的に「悲恋」しか描けないという作品の構造……大前提に負けてしまった。
そして。
山本先生の、「三度目」が、始まった……
怪作:『早乙女姉妹は漫画のためなら!?』
おそらくこの作品だけ知っている方も多いと思う。
それくらい有名になってしまったweb漫画だし、かろうじて抑えられていた山本先生の頭のネジが一気に弾け飛んだ作品でもある。
↓最近の山本先生のイメージ
絶好調なんですよ。
『早乙女姉妹は漫画のためなら!?』は純粋なエロコメだった。
……だった。
3話まで。
4話から急に流れが変わる。
それを分かってか、この漫画に関しては4話まで無料開放されている。
正直なところ、3話まで……ギャグのキレがブーストされる3話は仮に別にしたとしても、2話までは
・当時ジャンププラスはエロが比較的飽和気味だったこと(2019年現在さらに開き直っているが……)
・良くも悪くも攻めていた山本先生の過去作と比べて、ややありきたりなエロコメであったこと
・メインヒロインが「実の姉妹であること」
等から、評判は芳しくなかった。
だが、一転して4話にあるキャラクターが登場してから、急遽風向きが変わる。
それがこの瀧波レモンさん……通称レモニーさん(公式) なのだけれど……
初登場時(4話)からぶっ飛んでいたレモンさんだが、文章で説明するよりも「あの回」を読んでほしいんだよなー、とこの記事を書きながら思っていた。
「あの回」、内容説明できねえし……
……文章で説明したらはてなブログからbanされかねないし、何より"アレ"は漫画で読まないと伝わらないし……
……
さて。
BGMをかけてください。
X-Files Theme Full (Illuminati Song)
この画像を見てください。
……
おわかりいただけただろうか?
……
特定の一話だけ公開してる漫画なんて初めて見たよ……
さあ、読め。読むんだ。
↑この回ブログに貼るの多少不安があるけど……まぁ全年齢向けだし大丈夫でしょう。
初めてこれ読んだとき……
魂が震えたね。
あの戦闘狂:山本先生が……帰ってきたッ!
まさに王の帰還ッ!
まぁ上の話読んで頂ければ、僕が語ることはもう何もない。
そして6話で何かを掴んだのか、どんどん「戦闘狂」っぷりは磨きがかかってくる。
続きは是非読んでみてほしい。
もう誰も山本先生を止められない。
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……だが、戦闘には代償が伴う。
激しい戦いの結果、先生は。
戦場から追放されたのであった。
そりゃそうよ。
ちなみに、その後先生はあまりにも眩しすぎる白い後光を携えてまた帰ってきた。
王の帰還(2度目)
もう何やってるかわかんねえよ!!!
(耳かきしてるだけ)
ブラウザ版で朝は無修正なのでみんな早起きして読む。
お前ら……
コミックスはもちろん無修正である。
買おうな。
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一応全年齢向け漫画だからこれ紹介しても大丈夫だよね……?
急に垢バンとかやめてくれよな……
他にも新世紀の手法で規制と戦っているが、その手法を詳しく説明すると流石にダメな気がするので、ぜひ読むなりググるなりして確かめてほしい。
真面目な話……「くっだらねえことを真面目に描く」とか、「裏ではちゃんとしたメッセージをたまにブチ込んでくる」とか、「それ全部抜きに性癖が多少壊れてる」とか、これまで山本先生の作品に詰め込まれたエッセンス、『早乙女姉妹は漫画のためなら!?』には全部入ってるんですよ。
なんていうか、『E-ROBOT』と『ラブラッシュ』が一種の伏線だったのでは?
っていう、そんな気さえして。
真面目に6話読んだとき、大爆笑しながらめっちゃ感動しちゃったんですよ。
山本先生自身が漫画の登場人物やんけっていう。
まとめ
山本先生が大活躍する、有吉弘行も絶賛の『奴隷遊戯』好評発売中です。
3巻の表紙は山本先生です。
お読みいただきありがとうございました。
ではまた。